Charlie Hadenが2000年に残したスローラテンバラード作品集。各曲のタイトルからもわかるように、ラテン系の国の熱帯夜を感じさせるような、コンセプトアルバムのような感じになっています。メンバーがとても豪華。
どれも1曲目(En La Orilla del Mundo(At the Edge of the World))はこのアルバム全体の序曲とも言える曲。Joe Lovanoのテナーの音色とFederico Britos Ruizのバイオリンの音色が絶妙に絡む瞬間は美しいの一言。映画音楽のタイトルバックに流れても全くおかしくありません。
2曲目(Noche de Ronda(Night of Wondering))はPat Methenyのギターが最大の聞き所。曲とアルバム全体のムードに合わせて、アコースティックギターによる演奏です。ジャズらしくない、トツトツとしたフレーズが続くんですが、それでも耳奪われるものがあるのはさすがです。
3曲目(Nocturnal)はごく単純なモチーフをもとに展開されるアルバムタイトル曲。けだるく流れるパーカッションが心地よいです。Gonzalo Rubalcabaはかつてのバカテクから一歩引いた演奏。間を活かしたアドリブには、この人こんな一面もあったのか、と気づかされました。
4曲目(Moonlight(Claro de Luna))はJoe Lovanoを中心とした演奏。比較的普通のジャズに近いですが、ここでも控えめ流れもこってりしたラテンリズムは健在。
5曲目(Yo sin Ti(Me Without You))は何といってもバイオリンのFederico Britos Ruizの音色です。スローのラテンに合わせた切ないが、甘くなりきらないというぎりぎりの線。名手ですね。
6曲目(No Te Empenes Mas(Don't Try Anymore))はDavid Sanchezによるバラード演奏。これは標準点というところかな。
7曲目(Transparence)はGonzalo Rubalcabaのオリジナル。主役はここでもJoe Rovano御大。メロディアスなフラジオも含め、雑になることなく丁寧に吹き込んでいきます。Gonzaloはここではあくまで控えめ。
8曲目(El Ciego(The Blind))はこのアルバム唯一といってもいいミディアム曲。正直、これまでの暑苦しさが解放されてちょっとほっとします。スペイン風の哀愁あふれるメロディがFederico Britos Ruizによって演奏されます。バイオリン〜ピアノと変奏曲のように展開するアドリブは余韻たっぷり。
9曲目(Nightfall)はピアノトリオによる演奏。ここではCharlie Hadenのベースが主役。このアルバム全体ではほとんどサポート役にまわっていますが、ここでは確かな音程とフレーズでしっかりと存在感をみせています。なんというか、実に正統派ですね。
10曲目(Tres Palabras(Three Words))はDavid Sanchezによる演奏。悪くはないが、やや淡泊な印象。
11曲目(Contigo en la Distancia/En Nosotros(With You in the Distance/In Us))はこのアルバム全体を締めくくる演奏。ここでも演奏はあくまで淡々と。
派手さはなく、ほとんどがミディアムからスロー、というアルバム。同じような曲が続くので、正直どれも同じ曲に聞こえてきて、だんだん飽きてくるかもしれません。でも、そんな中にも曲のそこかしこにはっと驚く瞬間がちりばめられている、そんなアルバムです。暑い真夏の夜、ラテンアメリカのハードボイルドな気分にひたりたいときに流し聴きがおすすめ。
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