名手Paul Desmondとこれまた名手のJim Hallがボッサに取り組んだ、ジャズ・ボッサの代表的なアルバムです。
ボサノバ集なのでアルバムのどの曲から始まっても変わらない印象があるかも知れません。一枚が組曲のような雰囲気で、聴いているうちに自然に流れていきますが、決して飽きることがないのがさすが。
タイトル曲である1曲目(Bossa Antigua)はミディアムのオリジナル。粋な前奏に続くすばらしいメロディ。歌詞がつきそうな見事なオリジナルです。続くアドリブは、テーマからごく自然に流れていきます。いつまでも続いてほしいさわやかさですね。Jim Hallはコードワーク中心のソロですが、十分に歌っています。
Coltraneの演奏で知られる2曲目(The Night Has A Thousand Eyes)ですが、見事なボサに解釈されています。Paul Desmondのアドリブはメジャー7を効果的に使って、飽きさせません。
3曲目(O Gato)はちょっと毛色が変わります。哀愁ただよう感じです。ここではJim Hallのハーモニーセンスのすばらしさが堪能できます。
4曲目(Samba Cantina)は「黒いオルフェ」に通じる趣のあるサンバ。それにしても、Paul Desmondのアドリブはぼんやりしていたらテーマがいつ終わったのか確認できないくらい美しいメロディです。
5曲目(Caracao Doloroso)はPaul Desmond作曲。「悲しみのキュラソー」という美しい邦題がつけられています。これは比較的オーソドックスな曲ですね。Connie Kayの「正確に唄う」リズムが印象的です。
ちょっとムードの変わる6曲目(A Ship Without A Sail)。Paul Desmondのアドリブはよく聴くととても刺激的なフレイズに満ちています。
さわやかな7曲目(Alianca)はPaul Desmondのすばらしいオリジナル。メインのメロディを唄うPaul Desmondとカウンターメロディを唄うJim Hall。途中「Fallin' In Love With Love」のメロディを織り交ぜつつ唄うPaul Desmond。幸せな気分に浸れます。
「イパネマの娘」をパロディにしたタイトルの8曲目(The Girl From East 9th St.)は、ゆったりとしたテンポのボサ。よく聴くととても難しそうなコード進行です。Paul Desmondはそんなハーモニーの中を、とても丁寧に唄っていきます。
知る人ぞしる、というわけではなく、かなり知られたアルバムかと思いますが、大好きなのでとりあげました。初夏に最適。心が癒されます。
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