90年代後半の日本ジャズ界を席巻した大坂昌彦・原朋直クインテット。これは彼らの2枚目のアルバムです。
1曲目(Miles Away)は渋いモード曲。冒頭の端正でクールながらもアウトな水野のアドリブが光ります。原さんのアドリブは往年のWynton Marsalisを情熱的にしたようなスタイル。続く川嶋さんは堂々とした、豪放なスタイル。荒削りですが、空間を切り刻むようなアドリブがとても魅力的です。後半は大坂さんのドラムが正面に出てきます。痛快。
2曲目(def)はシンプルで、かつ大らかなテーマとアドリブが楽しめるタイトル曲。原さんは、トランペットで絵筆で絵を描くかのようなアドリブです。川嶋さんは今度は空間を埋めるようなアドリブ。続く水野はペンタトニック主体のアドリブ。刻々と空気の色を変えていきます。
3曲目(On The Airport Line)は複雑なハーモニーを持った水野のオリジナル。これは彼自身の編曲によって宮間俊之&ニューハードでも演奏されている曲です。ここでは川嶋さんがソプラノでいい味を出します。バックの演奏も熱を帯びていることがよくわかります。それにしても複雑な曲ですね。全然曲の流れが追えません。 余談ですが、「Airport Line」とは名古屋の通称「空港線」という道路のことだそうです。
4曲目(Once Upon A Time)は6/8拍子の静かな雰囲気の曲。ここでもムードを作るのは川嶋さんです。ソプラノがいい味出しています。
5曲目(Isn't It Right ?)は空間的な広がりが印象的な原さんのオリジナル。フュージョンのようなハーモニー進行を感じます。水野のアドリブは歌心満点。
6曲目(Picky)はかっこよすぎる冒頭のベースから、畳み掛けるようにテーマ。かっちりしたベースソロのあとは原さんが思うままに唄います。
7曲目(I Could Write A Book)はマイルスも演奏したスタンダード。ほのぼのとした雰囲気の原さんのカップミュートが魅力的です。続く山田譲さんのメロディアスさもなかなか。アメリカのスタンダードを演奏していますが、アドリブにはどこか日本的な歌心を感じます。日本ジャズの良さが出た演奏です。
8曲目(Terror Masa)は爆発的なテーマを持つ原さんのオリジナル。多田さんのアルトはビバップを基本としながらも現代的な音色です。中川さん、川嶋さんに続く原さんは自信たっぷりなソロ。思いのたけをそのまま音にした感じですね。エンディング、カッコいいです。
9曲目(The River Flows Into The Night)はアルバムラストをしっとりと飾る曲。静かに色合いを変化させていくハーモニーが美しいですね。
大坂さんを除くメンバーは、みなさん私の学生時代に名古屋で活躍していた人たちです。ピアノの水野は私の所属していた大学のクラブに在籍していました。懐かしさと誇らしさでいっぱいの思い出アルバムです。
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