Robert Altmanの映画「Kansas City」のサウンドトラック。1996年当時の期待の若手が古い曲を題材に、素晴らしい演奏を繰り広げます。
1曲目(Blues In The Dark)からムードはすっかりカンサス・シティです。粘っこいビート、観客の合いの手がムード満点。タバコの煙が感じられるようです。James Carterのしつこいソロ、Joshua Redmanの端正なソロの対比がいいですね。
2曲目(Moten Swing)は古めかしいハモリとアレンジ、ギターのカッティングが印象的。Jessie Davisがこれ以上ないくらいのソロを演じます。
3曲目(I Surrender Dear)は古いスタンダード。Ben Websterを意識したと思われるJames Carterのソロはこってりと濃い口。Nicholas Paytonのソロは深みはないものの、のびのびとしています。Cyrus Chestnutは安心して聴けますね。
4曲目(Queer Notions)は追い込まれるような、不安なムードを感じさせるテーマが魅力的です。David Murrayのソロは徐々に盛り上がっていくのが自然でいいですね。
5曲目(Lullaby Of The Leaves)はGerry Mulliganの演奏で有名ですが、ここではGeri Allenのレトロな演奏が堪能できるしかけです。
6曲目(I Left My Baby)はKevin Mahogabyのボーカルが楽しめます。これもしゃれっ気たっぷりのテノールですね。ボーカルにからみつくアルトはDavid Fathead Newmanでしょうか。そしてクライマックスの一つを作るClaug Handy、いいです。こんな演奏をライブで聴いたらのぼせてしまいますね。そしてラストのコール&レスポンスとカデンツァ。おなか一杯です。
7曲目(Yeah , Man)はリフが印象的な循環タイプの曲。盛り上がれ、と言わんばかりの曲ですね。実際かなり熱く、本人たちはサントラの収録ということを忘れているのでは、と感じるくらいの熱狂ぶりですね。ソロ・アレンジが渾然一体となった演奏です。
8曲目(Froggy Bottom)はホーン主体のこのアルバムでは珍しくGeri Allenが表に出てきます。David Fathead Newmanからは伝統的なアフターアワーズ的なアレンジで、盛り上がっていきます。
9曲目(Solitude)は淡々と進むアレンジがいいですね。さらに「Solitude」にふさわしいムードです。フューチュアされるJoshua Redmanは、ちょっとウケねらいぽいところもありますが、全般に落ち着いたソロで好感が持てます。
10曲目(Pagin' The Devil)はブルース。確かオリジナルはもっと速いテンポだと思います。小編成ということもあり、このサントラの中では比較的地味な演奏ですね。
11曲目(Lafayette)はソロとリフ中心のカンザスシティジャズの魅力があふれた演奏。ここではトランペット陣のバトルが聴きもの。世代が随分離れていると思いますが、見事な一体感です。途中くどく挿入されるリフもいいですね。
12曲目(Solitude(Reprise))はRon CarterとChristian McBrideのデュオのような形で演奏されます。映画でもラストに演奏されていましたね。帰らない時代を慈しむような演奏です。ムードたっぷりに終わります。
古いアレンジと斬新なソロが違和感なく融合した演奏はとても魅力的です。
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