BLUESNIK

Wailin' At The Vanguard / Arthur Taylor's Wailors


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Verve

  • Street Intro
  • A.T.'s Shout
  • Bridge Theme
  • Band Introductions
  • Dear Old Stockholm
  • Stressed Out
  • So Sorry Please
  • Bridge Theme
  • Mr A.T. Revisited
  • Sophisticated Lady
  • In A Sentimental Mood
  • Chelsea Bridge
  • Harlem Mardi Gras
  • Bridge Theme/Salt Peanuts

August 29,30, 1992

Abraham Burton(as),Willie Williams(ts),Jacky Terrasson(p),Tyler Mitchell(b),Art Taylor(ds)

 アート・テイラーが晩年に結成していた「Taylor's Wailors」のライブ盤。若いメンバーを従えて、これでもかとスィングするアルバムです。50年代のアート・テイラーはそれほど好きというわけではないのですが、90年代のこのアルバムは枯れた味わいが良くて愛聴しています。

 「Street Intro」はVillage Vanguardに入店する様子です。実際の店をご存知の方なら、狭い階段を下って店に入る様子が想像できると思います。

 1曲目(A.T.'s Shout)は短いですが、ブルース。フロントが演奏しているリフは「Walkin' / Miles Davis」で演奏された「Blue'n Boogie」の途中のリフですね。ビバップでは有名なリフです。ホーンに耳が行きがちですが、ピアノのジャッキー・テラソンが素晴らしいです。

 バンドテーマの「Bridge Theme」が演奏されます。これはこの後もアルバムの随所にプロムナード風に挿入され、このおかげでアルバムに統一感が出ています。

 メンバー紹介の「Band Introduction」を経て2曲目(Dear Old Stockholm)に入ります。アレンジは「'Round About Midnight / Miles Davis」のもの。マイルスバンドは青白い炎の様でしたが、テイラーズ・ウェイラーズは真っ赤に燃え盛る炎のようです。渋いベースソロ、続くエイブラハム・バートンはマクリーンのようですね。若いエネルギーを感じるソロです。続くウィリー・ウィリアムスもあおりたてるバックにのせられて奮闘します。

 3曲目(Stressed Out)は小気味良くスィングする佳曲。バートン,ウィリアムスともライヴということもあり、構成などお構い無しにハードに吹きまくります。ホーンが何か吹くごとに反応するピアノとドラムが素晴らしいです。

 4曲目(So Sorry Please)はバド・パウエルのチャーミングな曲です。これまで脇役に徹していたジャッキー・テラソンが本領を発揮します。

 5曲目(Mr A.T. Revisited)は本作の前のアルバムで「Mr A.T.」として演奏された曲(多分)。Village Vanguard再訪という意味合いなのでしょう。バートンはとても饒舌ですが、嫌みにならない程度でいいです。ウィリアムスも負けじと頑張りますが、ややバートン優勢でしょうか。

 6曲目(Sophisticated Lady)からはエリントン・ストレイホーン・メドレー。といっても特にアレンジはなく、一人ずつ演奏するだけです(^^)。一番はジャッキー・テラソン。ところどころドラムが入りますが、ほとんどソロ・ピアノのように演奏します。弾きまくることはありませんが、地味ではない、華のあるピアノですね。

 7曲目(In A Sentimental Mood)はウィリー・ウィリアムスのワンホーン。ペラペラとこれでもかとばかりに吹くようなことはなく、あくまでもグループ全体で曲を組み立てるのがいいですね。

 入れ替わるように入ってくる8曲目(Chelsea Bridge)はエイブラハム・バートンのワンホーン。この曲はとても難しいですが、難なくこなします。通常のバラードはソリストにおまかせですが、バックのサポートが多いのがこのバンドらしさを出しています。

 9曲目(Harlem Mardi Gras)はラテン風味のある楽しい曲。ややどたばたとあおるテイラー御大はご愛敬ですね。ソロはバートンから。ビートがラテンから4ビートに変わってからの彼はマクリーンのフレイズをベースとした情熱溢れるフレイズを水を得た魚のように吹きまくります。ウィリー・ウィリアムスは徐々に盛り上げるパターン。ソロが終わる頃には大盛り上がり大会です。ジャッキー・テラソンも素直でかつおいしいフレイズで御大の闘争心をあおります。いいバンドですね。

 10曲目(Bridge Theme/Salt Peanuts)は後テーマ。「Salt Peanuts! Salt Peanuts!」の声はビバップへのトリビュートですね。

 随所にビバップ〜ハードバップ期の曲やリフが挿入されるため、全般に50年代頃のジャズへのオマージュという感じがします。この演奏を束ねているのが実際に50年代を生きたテイラーなので、それが嫌みなくごく自然に感じられます。



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