トニー・ウィリアムスが晩年に率いたアコースティックバンドの終期のアルバム。どの曲にもしっかりしたアレンジが施されており、アルバム全体に亘って明確なバンドサウンドを聴くことができます。
1〜3曲はメドレー仕立てになっています。1曲目(Overture)はオープニングを飾るにふさわしいテーマ。ファンファーレのようなメロディ、パルスのようなトニーのドラムがいいですね。マルグリューが浮き立つようなアドリブをとります。
2曲目(Fear Not)はいかにもトニーらしい美しいメロディの曲。ゆったりとした曲調は、前後の曲に挟まれてチェンジ・オブ・ペースの役割を担っています。
3曲目(Creatures Of ConscienceI)はトニーのドラムを前面に出した曲。親しみやすいリフにのってトニーのドラムが暴れまくる、という趣向です。「海神(Neptune)」とはトニー本人のことなのでしょう。
4曲目(Blackbird)はビートルズナンバー。本家とは違い、親しみやすい4ビートに生まれ変わってます。ウォレス・ルーニーのトランペットとビル・ヒアースのソプラノのユニゾンが最高に気分いいですね。アドリブはビル・ピアースに惹かれます。
5曲目(Crime Scene)は比較的オーソドックスな曲調ですが、マルグリュー・ミラーのピアノが効いて、普通のバンドではどうということのなさそうな曲になりそうなところが、他にはないロマンチックな雰囲気になっています。ウォレス・ルーニーの内省的かつ激しいアドリブがいいですね。マルグリューの上手さが際立つ曲です。
6曲目(Poinciana)はスタンダード。トニーには珍しくブラシを使います。ウォレス・ルーニー、ビル・ピアースともに饒舌かつ間を効果的に生かしたアドリブです。ラストのルーニーは素晴らしいカデンツァです。
7曲目(Birdlike)はフレディ・ハバードの有名なオリジナルのブルース。トニーはVSOPでも演奏してきた曲です。テーマなしでいきなりハードなアドリブのチェイス。トランペット・テナー・ドラムが一体となった素晴らしいアドリブです。トニーはバンドリーダーとしての顔でなく、ドラマーとしての凄みを見せてくれます。どうだ!という得意げな顔が想像できますね。いやー、カッコいい。
このアルバムはライブを強く意識した構成になっていますね。それにしてもロマンチックな曲、ハードなアドリブと明確なコンセプトを持ったこのバンドがなくなってしまったのは寂しい限りです。
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