Abbey Lincolnが90年に吹きこんだ作品。アレンジをRon Carterが勤めています。大物ミュージシャンによるバラエティに富んだ曲目が興味深いです。McLeanは2曲目を除くすべての曲に参加しています。
1曲目(The World Is Falling Down)はアーシーでブルージーなAbbey Lincolnのオリジナル。Abbeyのしゃがれた歌声のあと、酔うようなClark Terry 、そしてMcLeanのソロ。コーラスごとに次々に転調するのが面白いですね。
2曲目(First Song)はCharlie Haden作曲の美しいバラード。ソロはTerryとHadenのみで、McLeanの出番は無し。一曲めと通して聴くと、早くもアルバム全体に黒い空気が流れます。
3曲目(You Must Believe In Spring And Love)はMichel Legrandの作品。この曲もスローですね。McLeanのダブルテンポを多用したアドリブは限られたスペースの中で存在感を示します。余韻の残るソロです。
4曲目(I Got Thunder(And It Rings))はAbbey Lincolnのオリジナル。ここに来てようやくアップテンポの曲になり、ぱっと雰囲気が明るくなります。Clark TerryにMcLeanという豪華な伴奏でAbbey Lincolnは気持ち良く唄います。
5曲目(How High The Moon)は説明不要の有名なスタンダード。バースから唄ったあとのMcLeanのワルツでのソロは聴きもの。McLeanがワルツを吹くのは珍しいです。
6曲目(When Love Was You And Me(Summery))はAbbey Lincolnのオリジナル。これもスローテンポです。McLeanのソロがありますが、ちょっと解釈が難しそうです。吹きにくい曲なのでしょう。
7曲目(Hi Fly)はRandy Westonの有名なオリジナル。歌詞があるとは知りませんでしたが、Jon Hendricksのようです。ソロになってから演奏が生き生きとしてきます。Clark Terryのトツトツとしたソロが聴かせどころですね。McLeanはベースソロのあと登場。この時代はクロマティックな動きが多いのですが、このソロはかつてのビバップ時代を彷彿とさせるメロディ運びにやりとさせます。
8曲目(Live For Life)はFrancis Laiの映画音楽です。曲は知っていたのですが、邦題が思い浮かびませんでした。「男と女」とか、そういう時代のものだと思いますが。ホーン隊はバック演奏のみでソロは無し。
McLeanの数少ない唄伴奏が聴ける貴重なアルバムです。Abbey Lincolnは決して上手いボーカリストではありませんが、聴かせるパワーを持っていますね。聴くほうもパワーが必要なボーカルです。 共演リストにあがっているJerry Dodgionはソロは吹かず、ハーモニーのみの参加です。
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