公式な初吹き込み作です。McLeanは1931年生まれなので、録音当時は20歳です。Milesの伝記には「Charlie Parkerが遊びに来ていたのでJackieはとても緊張していた」といった内容のコメントがあります。 ディスコグラフィーとしては、Rollinsとの唯一の共演盤、とも言えますね。
1曲目(Dig)はMcLeanのオリジナル。Sweet Georgia Brownのコード進行に基づいた曲です。デビューアルバムで自作を演奏されたということですね。Milesのあとに登場するMcLeanは、Charlie Parkerの影響を色濃く残したアドリブです。実質初デビューでよくやった、というところでしょう。MilesはMcLeanの前後でアドリブしますが、この時点で完全に後年のスタイルを作っています。Art Blakeyのドラムが煽りたてて良いですね。ここがビバップとの最大の違いでしょう。 このテーマのエンディングは、同じくSweet Georgia Brownに基づくClifford Brownの「Sweet Clifford」で使用されています。流行だったんでしょうか。
2曲目(It's Only A Paper Moon)はMilesのワンホーンでテーマが演奏されるスタンダード。アドリブはMiles、Rollinsのみ。二人とも演奏しており、Digほどのスリルはありません。
3曲目(Denial)はCharlie ParkerのConfirmationのコード進行に基づくオリジナル。録音当時Parkerがスタジオに居た、というMilesの証言がありますから、作曲者の前でコード進行を使った、ということですね。 Milesのアドリブはさすがのもの。ルーツであるビバップ演奏を聴かせてくれます。RollinsはのちのVillage VanguardのStrivers Rowを思わせるアドリブ。ただしごく短いです。McLeanはなかなか手馴れたアドリブです。巨人二人のあとでさぞやりにくかったことでしょう。こうして三人を聴いてみると、一番安定してカッコいいのはやはりMilesですね。帝王の名は伊達ではありません。
4曲目(Bluing)は一転してスローブルース。控えめなアレンジの中、充実したアドリブをするMilesに惹かれます。40年代のParkerのサイドマン時代とは別人のような成長ですね。RollinsはParkerのメロディに影響されたアドリブ。トーンが良いので聴き惚れてしまいます。McLeanは後年とは違いビバップ丸だしのアドリブ。音色も甘さがありますね。それにしてもMiles、この日はかなり好調だったようですね。それにしてもエンディングが滅茶苦茶です。
5曲目(Out Of The Blue)は「青天の霹靂」という意味のオリジナル。Milesは丁寧にアドリブ。ちょくちょく間違えているようにも思いますが、誤魔化すのも上手い。RollinsはMonkのWell,You Needn'tも引用したアドリブ。McLeanはちょい出演であまり印象に残りません。
ご覧のように若き巨匠に囲まれてMcLeanはデビューを果たします。ミュージシャン仲間で期待の若手だった、ということでしょうか。 この演奏の途中、Charlie Parkerが同じ空気を吸っていたのかと思うと感慨深いものがあります。すでにこのアルバムが録音されて50年以上を経過していますが、その価値はいささかも衰えていません。
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