80年代の不調期を乗り越えて、久々に自己のバンドでの作品。練り上げられた曲が多いアルバムですが、決して小難しい自己満足ではなく、楽しめる、後期の代表作といって過言ではない作品です。歓声が随所で聞こえますが、スタジオライブのようです。
1曲目(Five)はバンド紹介的なモード作品。ソリストはそれぞれ自分の技を見せますが、御大のマクリーンは息子のReneよりも冒険的なフレーズです。早くもアルバムの成功を予感させます。
2曲目(Bird Lives)はもろにCharlie Parker風メロディで楽しませるブルースです。やや短いですが、ビバップファンならテーマだけでニヤリとするでしょう。
3曲目(House Is Not A Home)は前曲とは打って変わって爽やかなフュージョン風サウンドが印象的。ごった煮とも言えるバンドのレパートリーにも驚きますが、演奏するミュージシャンの間口の広さにも驚きます。マクリーンのサウンドはいずれの曲でも本人の個性でねじ伏せていますね。
4曲目(Third World Express)は乗りやすそうなコード進行で、バンド全体が疾走する様子がよくわかります。マクリーンも好調。二管アンサンブルもほどよいラフさが魅力です。
5曲目(Dance Little Mandissa)はいきなりReneのフルートをフューチュアした曲。この曲はReneのオリジナルのようですが、どこかで聴いたことがあるような気がしますが、思い出せませんね。
6曲目(J.Mac's Dynasty)は、リフとアドリブが縦横に交錯する複雑な曲。実際、とても難しい曲だと思います。マクリーンは熱気をはらんだ「うねる」アドリブです。少々の破綻などものともせず、ひたすら熱いのがいいですね。タイトルに負けずに、御大が始めから終わりまで吹き通しです。血管切れないかこちらが心配になります。ラスト付近はさすがにネタ切れになっているのがよくわかります(笑)。
怒涛の展開が続くアルバムの中で、ようやく一息つくのが7曲目(Knot The Blues)。ミディアムテンポで確かにブルース進行ではありませんが、ブルースを感じさせる力強さが味わえます。
8曲目(Zimbabwe)は民俗的な音階(モード)で作られた曲。確かにタイトルから狙っているように、アフリカ大陸を感じさせるものがあります。大胆なピアノのサウンドがいいですね。
9曲目(King Tut's Strut)は8曲めと同様に民俗色を感じさせる一曲。Reneのソプラノが一層その感を強くさせます。続くマクリーンのアドリブはどういう状況でも変わらずひたすら熱い。ラストのロングトーン、荒い音色にしびれます。
ラストを飾る10曲目(Multi-Woman)は自然に体が動く「Jazz Rock」。どこか洗練されていない古臭いリズムが、そしてひたすら続くあまりカッコ良くないリフがいい感じです。狙っているのなら凄い。
ビバップあり、モードあり、民俗風あり、フュージョンあり、ジャズロックありと、ジャズの歴史箱のようなバラエティに富んだ選曲です。マクリーンのキャリアの長さを再確認させられます。御大のアドリブも公開ライブということもあり、このあとのアルバムほどクロマティックに偏らず、メロディとテクニックのほどよいバランスが素晴らしいです。お奨め。
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