70年代ライブの一枚。一時引退直前のような調子ではなく、このころからフレーズ・音色とも近年に通じるようになってきます。また、ベースとドラムの感覚が新しいため、60年代とは雰囲気が異なります。 ライブ盤ということで、録音状態があまり良くないのが残念。Kenny Drewのピアノがオフ気味です。
1曲目(Jack's Tune)はSo Whatタイプのモード曲。ひたすらその場で即興で演奏していく様子が記録されています。細かいスケールを積み重ねて時に熱く演奏する様子はColtraneのそれを想定したものと思いますが、出てくるのはまぎれもないMcLeanの音色というのが面白いところ。Alex Rielのドラムが良い仕事をしています。
2曲目(Mode For Jay Mac)はFreedom Jazz Danceに似たワンコードのテーマがなかなか良い感じ。McLeanも吹くのが大変そうですね。演奏は熱意でねじ伏せるという感じでしょうか。あまた居るモードの名手に比べれば語彙不足は否めませんが、勢いで納得させる、そういう演奏です。
3曲目(Where Is Love?)はタイトル通りのちょっと甘いロマンチックな唄もの。私はこの曲を知らないのですが、スタンダードなのでしょうか。ちょっとモダンな感じもします。 McLeanはちょっと厳しいピッチですが、甘過ぎず辛過ぎず、のアドリブです。控えめなKenny Drewのアドリブが良いですね。
4曲目(Callin')はKenny Drewのオリジナル。ポジティブな曲調がいかにも彼らしいです。アドリブはコード曲ということもあり、McLeanも自由に演奏しています。モード曲、1コード曲、今風の唄モノ、と続いてこういう純ジャズ曲でいきいきと演奏する姿を聴くと、やはりMcLeanはコードの中で演奏するのが得意だったのだな、というのを感じる演奏です。
タイトル曲である5曲目(A Ghetto Lullaby)はちょっと雰囲気が異なります。哀歌というのでしょうか、ちょっとユダヤ曲のような、湿り気のある哀愁を感じる曲です。アドリブそのものはごく通常のマイナーコードに基づくもの。ダブルタイムを駆使して、比較的熱いアドリブです。 率直に言ってこの曲のメロディそのものは個人的にはあまり好みではないです。「哀愁マクリーン」を好む方にはGoodかもしれません。
McLean版Village Vanguardというのは誉めすぎでしょうか。MilesもColtraneも、ライブではひたすら熱かったということが知られていますが、McLeanも彼らに負けないくらいライブでは熱かったのです。70年代ジャズの生きた記録としても貴重なライブ盤。
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