McLeanがフュージョンと真正面に向き合った作品。シュールなジャケットに目を奪われますが、決して色物ではなく真剣に取り組んでいます。Hiram Bullock、Will Lee、Mark Eganといった連中との共演が珍しい。
1曲目(Monuments)はややメランコリーなムードを感じさせるバラード。かつて繁栄した古代遺跡の中を歩くようなイメージ、でしょうか。McLeanのアドリブは口数が多く時折アウトなフレーズも見せるなど、なかなか奮闘している、というところです。
2曲目(On The Slick Side)は単調なファンクサウンド。曲にこれといった特徴が無い中で懸命に吹くMcLeanが少しつらそう。それなりに盛り上げよう、とがんばっています。
3曲目(They All Seem To Disappear)はコーラス入りの甘いロックバラード。モノローグのバックでMcLeanが吹くという趣向。これは悪くありませんが、ちょっといかにもな感じもします。アドリブそのものも標準的なものです。
4曲目(Gotta Get A Piece Of Your Soul)はかつてのDisco Soundというんでしょうか、ちょっと弱めのFunk Soundの中でMcLeanが演奏する、という趣向。フレーズそのものというか、感覚がまるきりジャズなので少し浮いているのは否めないですね。
5曲目(Long-Time Lover)はMcLan夫妻に捧げられたというロックバラード。Shakatakのような、いかにもな女性コーラスが時折入る中をMcLeanがアドリブする、という展開。McLeanには甘いバラードは似合いませんので、この曲はちょっとどうかな、という気はします。後半盛りあがってきてようやく満足いくような感じにはなります。
6曲目(Doctor Jackle And Mister Funk)は男性ボーカルも入ったディスコサウンド。これはMcLean本人のソロも調子良くて、イントロなんて一瞬David Sanbornばりです。ほどよいチープさもここではプラスに作用していますね。楽しいテイクです。ファンクの良さのバランスというのは微妙ですね。
7曲目(The Molimo)は標準的なフュージョンサウンド。タイトルはmo-Lee-moのことで、ピグミー族の楽器に由来しているとか。アドリブそのものは善戦しているものの残念ながらやや単調で、こういう曲に必要な盛りあがりに欠けると言えるでしょう。
McLeanはあくまでジャズの人、ということを逆説的に裏付ける作品ではあります。ファンクサウンド特有の、繰り返しコード、バックからの煽りの無い中でのアドリブ、というのも生粋のジャズの人McLeanにとってはやりづらかったことでしょう。 「たられば」は禁物ですが、もう少し曲が良かったら、他のソリストのサポートがあったら、と思わずにはいられません。せっかく全曲でHiram Bullockが入っているのに、ソロがほとんど聴けないのは寂しい限りです。
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