アルバム単位としてはBlueNote初アルバムとされています。Prestigeの頃とはリズムのムードが変わります。ドラムにPete LaRocaが加わったことが大きいでしょう。特に「Minor March」として知られる「Minor Apprehension」に顕著です。
1曲目(Hip Strut)はブルースですが、全篇にリズムの遊びを入れて飽きさせない構成です。McLeanは当然の安定したソロですが、所々でコード的に厳しい音を出して、ハーモニー的なチャレンジを試みています。リズムとしても、これまでの漫然としたハードバップからの脱却を図っているようです。これもPete LaRocaの効果でしょうか。 Donald Byrdは完全にMcLeanの相棒。期待通りのソロです。あとは、続くソロも含めてWalter Davis Jr.が非常にいい仕事をしていますね。
2曲目(Minor Apprehension)はこのアルバムの白眉となる演奏。何よりもPete LaRocaの熱いドラムと、それに立ち向かうMcLeanとByrdに注目です。 身をよじりつつうねうねと、時に美しく時にゴリゴリとしたメロディを吹きつづけるMcLeanにひたすら聞き惚れます。続くByrdは流れるようです。急流を華麗に渡る小舟のようなソロです。ラストのLaRocaはタムを中心に構成されるソロ。一息に聴かせる7分30秒です。
後半(B面)はいずれもWalter Davis Jr.の曲ですが、こちらは緊張感あふれるA面と一転してハッピーな、耳触りのいい曲ばかりです。
3曲目(Greasy)はブギウギのリズムによるブルース。McLean、Davis Jr.、Byrdともにリラックスしたソロですが、調子の良いのはByrdでしょうか。
4曲目(Sweet Cakes)はテーマに変拍子を盛りこんだ作品。ソロはオーソドックスなものです。McLeanはハーモニー的な冒険はありませんが、唄うことに関しては良い感じです。続くByrdはソロの構成が上手い。どうもこの日のセッションは、Byrdに分があったようです。
5曲目(Davis Cup)のタイトルは有名なテニス大会と作曲者Walter Davis Jr.本人の名前を掛け合わせたもの。タイトルに違わないしゃれたムードの佳曲です。McLeanのソロの中でもいくつかのセカンドリフが出てきます。
輸入盤CDには、未発表の6曲目(Formidable)が収録されています。これが未発表はもったいない哀愁漂う名曲。未聴の方はぜひ、入手の上でお聴きください。McLeanももちろんいいソロを吹いています。
これから徐々に変革していくMcLeanを知っている現在としてはちょっと物足りないところもありますが、この時点のアルバムとしては及第点でしょう。ハードバップを謳歌するミュージシャンの姿が捉えられています。
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