BLUESNIK

Pithecanthropus Erectus / Charles Mingus


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Atlantic 1237

  • Pithecanthropus Erectus(1.Evolution 2.Superiority Complex 3.Decline 4.Destruction)
  • A Foggy Day
  • Profile Of Jackie
  • Love Chant
January 30, 1956

Jackie McLean(as),J.R.Monterose(ts),Mal Waldron(p),Charles Mingus(b),Willie Jones(ds)


 McLeanは短期間Charles Mingusのバンドに在籍し、数枚のアルバムを残します。これはそのときの記録にしてMingusの初期の代表的なアルバムの一つ。「Jackie McLeanのサウンドが欲しいんだ」と言われたそうですが、その期待に応えようと、懸命に演奏しています。

 1曲目(Pithecanthropus Erectus)は人類の愚かさを直立猿人に例えて寓話的に表現したオリジナル。ダイナミクスの効いたテーマが印象的です。有名なテーマは1.Evolution。J.R.Monteroseのアドリブからが2.Superiorityでしょうか。徐々に熱を帯び、躍動的になるバンドサウンドから耳を離すことができません。緊張感が並ではありません。Mal Waldronのあとに続くのがMcLeanのアドリブ。ここからが3.Declineでしょう。比較的オーソドックスなアドリブスタイルですが、もう一つ飛び出しきれない、というところでしょうか。ラストのテーマが4.Destruction。直立猿人の破滅が描かれます。ラストの混沌と失速、これを描きたいための10分間だったと言えましょう。

 2曲目(A Foggy Day)はGershwinのスタンダード。霧のSan Franciscoはユーモラスな渋滞の街になっています。テーマはJ.R.Monterose。McLeanは笛やら、アルトでサイレン風の効果音やら、忙しく動きまわっているようです。正直、効果音に耳を奪われてアドリブに気持ちがいかないですね...。続くMingusのソロが素晴らしい。McLeanのソロの途中も、Mingusの強烈なベースラインに耳が行きますね。

 3曲目(Profile Of Jackie)はタイトル通りMcLeanをフューチュアした演奏。スタンダードLauraに少し似ています。中間部分に仕掛けがあり、一筋縄のバラードでは終わらないところがMingusらしいですね。McLeanはやや細い線が気にはなりますが、懸命な演奏です。特に目立つアドリブはありません。ここでもMingusのベースラインが目立ちますね。

 4曲目(Love Chant)はクラシカルなムードの漂うMingusのオリジナル。「知性派」Mingusの面目躍如というところです。繰り返しのコードとリズムに乗る微妙なメロディ移り変わりが美しい。どこまでがテーマでどこからがオリジナルか判別しづらい曲です。フロント二人はそれぞれが即興で奏でるメロディに違いに触発されつつ、アドリブを続けていきます。それにしても不思議な曲ですね。ここでの注目は、中間部分のMal Waldronのアドリブ。Mingusとの丁丁発止のインタープレイが素晴らしい。

 これはOrnette ColemanがNew Yorkに現れる数年前の演奏です。何という斬新さでしょうか。このバンドではMcLeanも色々と苦労があったようですが、音楽的には相当の影響を受け、感謝しているようです。McLeanが60年代になってビバップ〜ハードバップから抜け出せたのは、このMingus Band入ったことが大きいと思います。
 それにしても、いつ聴いてもたった5人の演奏とは思えません。


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