「Sweet Love Of Mine」で評判の高いアルバムです。ジャケットはすごいことになってます。でも中身はオーソドックスなモダンジャズ。4曲目から、いわゆる「B面」がとても充実しているアルバムです。
1曲目(Demon's Dance)はこの時代特有の空気を感じるモード曲。McLeanは時折フリーなトーンを聴かせますが、これまでの流れとはうって変わったオーソドックスなスタイルでまず驚かされます。Woody Shawとのフロントライン、DeJohonetteのドラムが、それまでとは別種類の新しさを感じさせます。
2曲目(Toyland)はMcLeanの作る典型的なスタイルのバラード。甘辛いトーンがここでも聴かせます。ピアノは最小限のソロ。あくまでもMcLeanのソロをメインにじっくりと聴かせます。
3曲目(Boo Ann's Grind)はWoody Shawのオリジナル。60年代のモード全盛期とはまた一味違うトーンのオリジナル。McLeanはモード技法を主軸に、音域の下から上まで縦横に音色を繰り出します。ちょっと苦しそうではあります。続くWoody Shawもやや散漫なソロ。全般に、素材としての曲は良いですが、全体にアドリブがちょっとこなれていない印象ですね。
4曲目(Sweet Love Of Mine)はWoody Shawのオリジナル。このアルバムを名盤たらしめている名曲です。タイトル通りの美しいメロディと、ボサノバのリズムが最高のムードを示してくれます。続くソロも上出来。McLeanはこれだ、といわんばかりの切なく美しいアドリブ。続くWoody Shawはダブルタイムも駆使したスリリングなもの。そして同じムードでLament Johnsonのソロ。彼にとって一世一代の名ソロです。未調の方はぜひ、聴いてみてください。
5曲目(Floogeh)は畳かかけるリズムとメロディが印象的なMcleanのオリジナル。モード演奏にのった演奏ですが、McLeanはバックとも調子を合わせてフリーキーなトーンと複雑なモードスケール、そして昔からのメロディアスなアドリブを組み合わせて聴かせてくれます。
6曲目(Message From Trane)はCal Massey作曲による曲。録音前に亡くなったColtraneに捧げられたものなのでしょう。曲そのものは爽快なジャズ。それまでどこか沈んだムードの漂うこのアルバムの中で、一条の光のような効果を出している曲です。McLean、Shawともに申し分無し。
このアルバムを最後に、マクリーンは沈黙します。「やり切った」というのが当時の心境なのでしょうか。もうニ三枚このメンバーでアルバムを残してもらいたかった、というのが聴き手としてのわがままな思いです。 良いコンビを見せるWoody Shawとは数少ない共演でとても貴重です。
|