BLUESNIK

Let Freedom Ring


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Blue Note 4106
  • Melody For Melonae
  • I'll Keep Loving You
  • Rene
  • Omega
March 19, 1962

Jackie McLean(as),Walter Davis(p),Herbie Lewis(b),Billy Higgins(ds)


 一般にこのアルバムが「マクリーンの新主流派宣言」といわれていますが、そのようなことを知らなくてもアルバム全編にただよう緊張感がただならぬものを感じさせます。未消化な面は否めませんが、本アルバムからはそうした欠点を補って余りある勢いを感じることができると思います。

 1曲目(Melody For Melonae)はモード曲にしてなかなかの名曲。McLeanはそれまで比較的オーソドックスなメロディを吹いていたので、これまでになかったフリートーンを出していることに対する当時の衝撃は大きかったことでしょう。
 とはいえ、まだまとまったメロディを吹きこなすには至らず、感情あるいは熱情を赴くままに音にしている、という感が強いです。まぁ、これはフリートーンやモードというキーワードに関わり無くMcLeanのソロの特徴でもあるわけですが。ちょっと全体に気合が空回りしている感が無きにしも有らずですが、Billy Higginsの起用はひとまず成功していますね。
 ちなみにMelonaeとは「Little Melonae」でも知られるMcLeanの娘の名前。

 2曲目(I'll Keep Loving You)はBud Powellの名曲。美しいタイトルと、タイトルに負けず美しいメロディを有しています。McLeanのソロはメロディフェイク程度ですが、甘いバラードでは終わらせない気合を感じます。かなり危ういピッチが気にはなりますが、熱意で良しとしましょう。Walter Davisが良い仕事をしています。
 McLeanは、Bud Powellに若い頃に可愛がられていたそうです。その頃の思い出が、この曲を選ばせたのでしょうか。McLeanが自分のアルバム参加者以外のオリジナルバラードを吹くのはとても珍しいことです。

 3曲目(Rene)はブルース。McLeanはここではフリーなトーンは時折しか吹かず、比較的これまでのオーソドックスなブルースのラインを吹いています。バックのバッキングがこれまでの奏者とは異なりますので、新鮮に聞こえます。それにしても曲のほとんどを吹きつづけというのは大変なものです。内容は実験的。構成を考えず、ひたすら吹いている、というテイクです。
 Reneとはご存知Rene McLean。サックス奏者として活躍する息子のことです。

 4曲目(Omega)はユニークなベースラインが光るMcLeanのオリジナル。カッコいい曲です。McLeanはめまぐるしく変わるバックからアイディアをもらい、細かいメロディを積み重ねてアドリブを行いて、これが効果を生んでいます。徐々に定まったラインから離れ、フェイクしていくHerbie Lewisのベースが良いですね。
 OmegaとはMcLeanの母親の名前だそうです。

 本アルバムは、すべての曲のタイトルがMcLeanの大切な人に関連しています。こうしたこだわりにも、McLeanが本アルバムに懸けた思いを感じることができます。
 McLeanは、以前から新しいサウンドへの試みを行っていました。しかしその試みは、McLean本人のソロの中に留まっていました。このアルバムの歴史的意義は、McLeanが新しいサウンドへの試みをソロだけでなくバンド全体で行う方向に踏み出した、という点だと思います。ただしサウンドとして完成には至っておらず、One Step Beyondまではしばしゆきつ戻りつを繰り返すことになります。


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