BLUESNIK

One Step Beyond


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Blue Bote 4137
  • Saturday And Sunday
  • Frankenstein
  • Blue Rondo
  • Ghost Town
March 1, 1963

Grachan Moncur III(tb),Jackie McLean(as),Bobby Hutcherson(vib),Eddie Khan(b),Tony Williams(ds)


 タイトルとジャケットがばっちり決まった名盤。何といってもTony Williamsが16歳で加入し、バンドをあおりまくっていることが最大の魅力です。また、McLeanのアルバム製作活動として見ても、ここに来てLet Freedom Ringに始まるMcLeanの新しいサウンドへの探求は一つの形を見た、と思います。ビブラフォンとトロンボーンが入ることにより、サウンドに乾きと重みが生まれ、ピアノを抜いたことでハーモニーが定まりにくくなり、全体の浮遊感を生み出したのが、最大の特徴でしょう。乾ききっているが重苦しく、不安定。ハードバップ時代とは異なる、McLeanの望んだサウンドになったのだと思います。

 1曲目(Saturday And Sunday)はSo Whatタイプのモード曲。疾走するドラムと、冷たく淡々と進むEddie Khanのベースに載せられてフロント陣が吹きまくります。McLeanのモードは相当荒くネタ切れも感じられるのですが、Tony Williamsの煽りによってエネルギーを得ています。ラストでTonyがドラムソロをしますが、こんなソロはそれまでの時代のドラムソロには無かったものです。これが16歳なのですから、Tonyの出現に誰もが驚愕したのがわかります。

 2曲目(Frankenstein)はゆっくりなのか、インテンポなのか微妙な二つのタイム感覚を持つワルツ。McLeanのソロは、ビバップ−ハードバップ時代のものとは全く異なり、アルトで唄うというよりも、アルトで語るというのがふさわしいもの。かなり気合が入っているのか、ピッチが相当きついですが、メロディの力で強引にねじ伏せます。ソロが終わったらふらふらになったことでしょう。続くMoncur IIIのソロはMcLeanに比べると聴きやすく、ここでようやくほっとします。

 3曲目(Blue Rondo)はブルースです。この編成で、これまでのブルースとは何が変わったのか、というのが一番の興味ですね。Moncur IIIのソロはオーソドックスなもの。これに対してMcLeanのソロは、アルバム中では一番オーソドックスではありますが、後半辺りから通常のブルースとは違うメロディを出しています。少なくともコードとしてブルースを捉えていないように感じます。まとまっていて、聴きやすい曲です。このアルバムが苦手な方にはお勧めのテイクです。

 4曲目(Ghost Town)はMoncur IIIのユニークな曲。情景音楽とでも言うんでしょうか、ホラー映画風の曲です。不安感を煽るハーモニーと、Tonyの効果音が面白いですね。この編成が実にはまった曲と言えます。McLeanは探りながらのソロ。徐々に熱くなっていくのですが、ちょっと山場を作りにくそうで、盛り上げに至らなかった感じがしますね。この曲でソロを取るのは大変だったことでしょう。

 力任せのソロでメンバーを無理やり束ねてしまうMcLean、ユニークな曲を提供したMoncur III、アルバム全体のサウンドをまとめ、雰囲気を決定付けたBobby Hutcherson、若さゆえに突っ走り、メンバー全員を煽るTony Williams、そして乾いた冷徹なラインでアルバムのムードを下支えしているEddie Khan。正にこの編成、このメンバーでしかできないサウンドだ、と断言できるでしょう。


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