かつて「Jacknife」「High Frequency」として発売される予定でお蔵入りになった二つのセッションがありました。この二つのセッションは、後年に抱き合わせで、二枚組LP「Jacknife」という名称で「発掘盤」として発売されていました。現在は入手困難です。
本アルバムは、タイトルを「Jacknife」としていますが、かつて発売された二枚組LPの再発ではなく、本来発売されるはずでお蔵入りになった「Jacknife」セッションを一枚にまとめたものです。よって「High Frequency」セッション分は入っていません。この再発ジャケットは、同じく再発された「Vertigo」とほぼ同じデザインですね。リード・マイルス風味なのでしょう。
1曲目(On The Nile)は日本音階のようなテーマが印象的です。この時代特有の深刻な空気が感じられる意欲作です。McLeanのソロも、普段の「マクリーン節」とは無縁の、ペンタトニックを基調にしたものです。かなり格闘した後が感じられます。色々葛藤があったのでしょうか。
2曲目(Climax)は激しいパルスが特徴。パーカッシブな曲だと思ったらDeJohnette作曲ですね。モード曲ですが、McLeanはコードとモードの間を自在に行き来しています。すさまじいDeJohnetteのドラムに推されて、捕り憑かれたかのように吹きまくります。ソロがMorganに変わってもリズム陣の煽りは同じ。むしろ激しさを増しているようです。圧倒されます。
3曲目(Soft Blue)は24小節のブルース。これはMorgan作曲ですね。ちょっとイナセ。地に足の付いたThe Sidewinderですね。曲のせいもあり、ここでのMcLeanはオーソドックスなハードバップを聴かせてくれます。
4曲目(Jacknife)はかなり気持ち悪いテーマです。いいセンスしていますね。気持ち良いコード進行で、McLeanもいい刺激を得たのか、アドリブも好調です。それにしても、Larry Willisはこの曲に限らず、Herbie Hancockライクにゴキゲンなピアノを聴かせてくれます。
最後の5曲目(Blue Fable)はいきなり時代が10年位前に戻ったようです。ごく普通のハードバップ。最後にこういうのを出すのがにくいですね。McLean - Morganのラインは安心して聴いていられます。
一曲目でかなり肩に力が入りますが、全般を聴くと間違いなく好アルバムです。「Vertigo」もそうですが、なぜ未発表だったのかさっぱりわかりません。
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