Sweet Basil Trioとしても知られるシダー・ウォルトン・トリオとの共演。ミディアムテンポを主体にした久々のスタンダード集です。
1曲目(You Don't Know What Love Is)は正統派のバラード演奏。メロディの端々を複雑にフェイクするマクリーンが堪能できます。まずは軽く収めました、という演奏ですね。過去のバラードスタイルは割とストレートにメロディを演奏していましたが、近年は複雑なアルペジオを入れるようになったことがわかります。
アルバムタイトル曲である2曲目(Nature Boy)は素直にメロディを唄いあげます。アップテンポになってからは空間を埋め尽くすかのようにフレイズを重ねます。これは近年のスタイルですね。シダー・ウォルトンがちょっとマクリーンに影響されてうにうにしてます。
3曲目(I Can't Get Started)は安心して聴ける演奏です。過去何度も演奏してきたのでしょう。最後の転調がなかなかいかにも、でいいですね。
4曲目(What Is This Thing Called Love)は小走りくらいのアップテンポ。かつてのプレスティッジ時代をほうふつとさせるアドリブです。昔聴いたフレイズがいくつか出てきますね。
5曲目(I Fall In Love Too Easily)は正統派のバラード演奏。テーマの演奏は非常に情報量の多いフレイズで、巧みな印象を受けます。シダー・ウォルトンは堅実なアドリブでサポート。マクリーンのアドリブはテーマ後半。倍テンでのアドリブはテーマを念頭においた変奏です。
6曲目(Smoke Gets In Your Eyes)もスローテンポ。アルトサックスで、高音でのロングトーンはピッチの維持が難しいですが、安心して聴けます。比較的ロングトーンを聴かせるテーマ処理です。倍テンポでピアノのアドリブ。ややもすれば甘くなりそうな曲ですが、トリオが一体となってきっちりとした演奏でツボを押さえます。
7曲目(Star Eyes)はミディアムファースト。この曲はCapuchin Swingの元になった曲なので、マクリーンにとってフェイバリットで手慣れた曲なのでしょう。この曲は複雑なコード進行を持っていますが、かつての50年代のビバップフレイズを繰り出して聴かせてくれます。こういうスタイルでのアドリブは久しぶりです。イントロ・ラストにちょっとしたキメがあります。
8曲目(A Nightingale Sang In Berkeley Square)はインストで演奏するのは珍しいスタンダード。美しいテーマです。1コーラス丸々演奏するアドリブは倍テンポ。バックのトリオと小気味よいコンビネーションを聴かせてくれます。
プレスティッジ時代にも数多くのスタンダードを録音していますが、久しぶりのスタンダード集は時が経っても変わらずアドリブの名手であることを再認識させるものです。
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