BLUESNIK

Tippin' The Scales


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Blue Note 4427
  • Tippin' The Scales
  • Rainy Blues
  • Nursery Blues
  • Nicely
  • Two For One
  • Cabin In The Sky
September 28, 1962

Jackie McLean(as),Sonny Clark(p),Butch Warren(b),Art Taylor(ds)


 録音当時未発表のアルバム。McLeanにとっては貴重なワンホーンで、Sonny ClarkとArt Taylorとの最後の共演が注目の一枚です。

 1曲目(Tippin' The Scales)はキメも決まった爽快な一曲。Let Freedom Ringほどの切迫感はありませんが、通じる流れを持った曲です。逆に言えば、そうした流れの曲はこの曲だけであり、ほかはそれほどのテンションを持っていません。McLeanは丁寧なアドリブ。複雑に変化するコードをきっちり押さえています。

 2曲目(Rainy Blues)はこの時期としては非常にオーソドックスなブルース。高音でのピッチが相当気にはなりますが、アドリブそのものは決して悪いものではありません。落ち着いたアドリブです。Sonny Clarkも同様。逆に言えば、ハプニングは起きていない、そういう演奏です。

 3曲目(Nursery Blues)はSonny Clarkによるブルース。ややMcLeanのミストーンが気になります。2曲目のBluesよりテンポアップしていることもあり、演奏全体に勢いが出ています。ソロ後半にがぜんいい感じになりますね。Clarkもこちらのソロの方が良。

 4曲目(Nicely)は、まるでSonny Reddの楽曲のような歌心にあふれるSonny Clarkのオリジナル。この時代McLeanはオリジナル志向が強いですが、ここではかつてStandardをたっぷり演奏していた頃に戻って、曲に負けないほどの「歌」を歌ってくれます。佳作です。

 5曲目(Two For One)はSonny Clarkのオリジナル。コンセプトはモードのようですが、コード一発もの、という感じで演奏されています。McLeanはテンション高めのアドリブで1曲目やラストと並ぶ本アルバムの山場と言えるかと思います。McLeanにしては珍しく引用フレーズを吹いています。Mantecaですね。Clarkもちょっとそれらしいフレーズを弾いています。

 6曲目(Cabin In The Sky)はよく知られたスタンダード。この時期このようなもろスタンダードは珍しいですね。特にアレンジに仕掛けがあるわけでもなく、淡々と演奏されますが、ソロの質はとても高く、きっと満足行く内容だと思います。ここでは淡々とした流れが吉と出ました。いやあ、聴き惚れます。

 惜しむらくはピッチがかなり悪く、聴いていて苦しいものがあります。曲も質は低くありませんが先鋭的なものはなく、非常にオーソドックス。次の音楽的なステップへの産みの苦しみだったのでしょうか。また、ドラムからのプッシュが全体に弱く演奏全体のテンションがやや低いため、Blue Noteの全体の質の高さから言えば未発表もやむなしか、という一枚です。


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