十年ほど前は未発表で幻の名盤として有名だったそうです。現在はCDで出回っているので入手は比較的容易です。ただしマクリーンを期待して購入される向きには不満かも。ジャケットにも名前が記載されていません。アルバムそのものはいい意味で古き善きハードバップセッションです。Tina Brooksはこうしたセッション向けの聴きやすく調子のいい曲を提供しています。
1曲目(Back to the Tracks)はミディアムテンポによるブルース。バウンスするというんでしょうか、気持ちよく流れていきます。II-V部分の処理にR&B畑であったというBrooksらしさを感じます。Blue Mitchelのアドリブもリラックスしたもの。
2曲目(Street Singer)はMcLeanが登場する唯一のナンバー。「Jackie's Bag」のB面セッションです。かつての日本版の同アルバムを購入するとボーナストラックで収録されていたものです。編曲がよく考えられており、佳曲といっていいかと思います。けだるいDancerの動きを表現しているのでしょうか、随所に現れる三管によるロングトーンがたまらない魅力を出しています。
3曲目(The Blues and I)はBack to the Tracksと似た構成のブルース。Brooksのアドリブは本当にソツが無いですね。Blue MitchelはII-V部分で得意のアウトフレーズを出しています。
後半はスタンダードになります。4曲目(For Heavens Sake)は有名なバラードですね。Brooksは正確なピッチと正統派のアドリブで、ややもするとだれる危険のあるテンポの中で緊張感を保ったままアドリブしていきます。
5曲目(The Ruby and The Pearl)はアラビア音階を使ったややエキゾチックな展開のスタンダード。もっとハードバップ寄りですが、どこかCaravanに通じるものがありますね。
Tina Brooksが残念ながら当時無名だったにしても、残りのメンバーの知名度・演奏のレベル・曲の良さを考えると、なぜ未発表だったのかホントに疑問のアルバムです。
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