二つのセッションを合わせた作品です。A面は「Cool Struttin'」で共演したSonny Clarkを迎えてのハードバップ。このセッションがブルーノートレーベルでの初リーダー吹きこみになります。
1曲目(Quadrangle)は奇妙なテーマでインパクト大です。この曲はコードがなく、メロディのみで構成されている、というコンセプトだそうですが、このアドリブは「I Got Rhythm」のコードを基に行っています。McLean本人は「まだこのころはコード無しでアドリブする勇気がなかった」といっているそうです。ちなみにこのテーマはセカンドリーダー作「Lights Out!」の「Inding」でも現れます。 演奏内容は申し分なし。世界中の何人のアルト奏者がこの演奏をコピーしたことでしょう。 ほとんどSonny Clarkの存在感が無いのが残念です。Philly Joe Jonesのドラムが素晴らしい。
2曲目(Blues Inn)はタイトル通りのFのブルース。いかにも即席で作ったような単純なリフですが、ソロの中身で十分聴かせます。 ソロはMcLeanからスタート。次がDonald Byrd。二人の相性は抜群です。McLeanのソロは緊張感が高いのですが、Byrdになるとリラックスした演奏になるのが興味深いです。続くソロのSonny Clarkはさらにリラックスし、テンポまで変わりそうな勢い。
3曲目(Fidel)は二つのコードで構成されるリフの部分+ドミナント進行のブリッジ、という「Little Melonae」に似た構成の曲です。Donald Byrdが密度のたっぷり詰ったソロを聴かせてくれます。バックとのバランスも良いですね。 続くMcLeanは迷いのない「マクリーン・リック」全開で実に気持ち良いソロです。若若しい。
B面はBlue MitchellとTina Brooksとの3管編成。ブルーノートには無数のハードバップが録音されていますが、その中でもこの録音は特に名高いセッションとして知られています。プレステッジ時代には見られない緻密なアレンジと作曲、もちろん素晴らしいアドリブがその理由。じっくり聴く価値のある演奏です。アレンジはMcLean本人とのことです。このセッションの未発表曲の一曲は「Back To The Tracks/Tina Brooks」の2曲めとして収録されています。
4曲目(Appointment In Ghana)はMcLeanのモード演奏の萌芽として知られる演奏です。まだ全員がコードの枠組みですが、これまでには無いムードに、ハードバップが新しいステップを踏み出したことが感じられるのではないでしょうか。 曲そのものの評価も高く、今でもしばしばミュージシャンの間で演奏されている曲です。テーマとアドリブで曲の長さが異なるのはご存知でしょうか?
5曲目(A Ballad For Doll)は三管のハモリが美しいバラード。アドリブはKenny Drewのみ。ちなみにDollはMcLeanの奥さんです。
6曲目(Isle Of Java)はトランペットとテナーをバックにしたテーマのアレンジが秀逸。この曲もモードで出来ており、細かいモードの組み合わせで出来ています。McLeanもまずまずですが、Mitchellの方がまとまっているように思います。Tinaの「メリーさんの羊」はご愛嬌。
McLeanがブルーノートに移籍しなかったら、おそらく知る人ぞ知る情熱系B級アルト奏者で終わっていたことでしょう。B級ハードバッパー・マクリーンの「大化け」はこのブルーノート移籍から始まります。
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