スケールとは?
スケールとは、「音のならびのルール」です。並び方によって様々な呼び名が存在します。まずここではメジャースケールを紹介しましょう。
メジャースケールは、音の間隔を全音=全、半音=半で表すと、
という具合に並んでいます。
このルールによる音の並びが、メジャースケールです。Cの音から始まればCメジャースケール、Dの音から始まればDメジャースケール、Bbの音から始まればBbメジャースケールというわけですね。
参考までにそれぞれのスケールの構成音を紹介しましょう。
Cメジャースケール :C D E F G A B C
Dメジャースケール :D E F# G A B C# D
Bbメジャースケール:Bb C D Eb F G A Bb
始まる音がずれるだけで、音程がすべて「全全半全全全半」となっていますね。
シャープとフラットのナゾ
ところで、メインの話題とはまったく無関係ですが、なぜDメジャースケールの半音は#(シャープ:半音あげる)で表現し、Bbメジャースケールの半音はb(フラット:半音下げる)で表現するのでしょう?誰が決めた?バッハか?ヘンデルか?責任者出てこい!
...疑問はごもっとも。では、試しにDメジャースケールをフラットで表現してみましょう。
D E Gb G A B Db D
今度はBbメジャースケールをシャープで。Bb=A#ですから、
A# C D D# F G A A#
なんとなく「構わないじゃん」と思えなくもないですが、こうしてしまうと「スケールはABCDEFGの順番で表現する」とことができなくなります。Dメジャースケールでは「Gb」「G」、A#(=Bb)メジャースケールでは「D」「D#」や「A」「A#」という具合に「同一の音で臨時記号が違う」という表現が出てしまうわけです。
これは、五線譜に書いた場合「同じ高さに別の音が存在する」ということになります。すると、五線譜は非常に見にくくなるんですね。だって音の高さは五線譜の高さで表現するのに、同じ高さに違う高さの音符が存在してしまうわけですから。これは誰だって混乱しますよね。
3つの顔を持つマイナースケール
マイナースケールは、メジャースケールの3・6・7番目の音を半音下げます。
Cマイナースケール :C D Eb F G Ab Bb C
Dマイナースケール :D E F G A Bb C D
Bbマイナースケール:Bb C Db Eb F Gb Ab Bb
こうしてできたスケールをナチュラルマイナーと呼びます。日本語で自然的短音階。
以下、Cマイナーで話をしますね。
マイナーにはナチュラルマイナーのほかに、2つのスケールが存在します。
ナチュラルマイナースケール(自然的短音階) :C D Eb F G Ab Bb C
ハーモニックマイナースケール(和声的短音階):C D Eb F G A Bb C
メロディックマイナースケール(旋律的短音階):C D Eb F G A B C
結局6度・7度の音が少しずつ違うんですね。なぜ3つも存在するのかは、ハーモニー上の理由、聴覚上の理由などがあります。詳しくは専門の本をどうぞ、なのですが、感覚的な話でいえば、
ハーモニックマイナー:GとAbは半音で音が濁るから
メロディックマイナー:音階を聴いたときの違和感を解消するため
といった感じだと思います。
じゃあDとEbも半音じゃないの、なんていわないでください(笑)。とりあえずCとGは、ハーモニー上重要な音なので、その半音隣りの音が入ると音がにごりやすい、ということで(←逃げ(笑))。
これら3つのスケールの共通点はなんだろう、という視点から見ると、「3度は必ずメジャースケールの3度から半音下がる」という原則があることがわかります。
マイナーとメジャーの違いは?
さて、マイナーとメジャーは何が違うんでしょう。答えは上でも記述した「3番目の音」。Cでいえば「E」か「Eb」かがマイナーとメジャーの境目です。Cに対してEは長3度。Ebは短3度。この音の響きがキモなんですね。
このことは重要なことです。裏返せば、「ルートに対して長3度が響くとメジャーに感じる」「ルートに対して短3度が響くとマイナーに感じる」ということを意味します。
ジャズの和音が複雑になるにつれて、和声を出す楽器を担当するプレイヤーはこのことを逆手に取り、あるいはこのことを避けるために、わざと「ルートから長3度あるいは短3度のハーモニーを避ける」ことを行うことになります。具体的には4度の音程を重ねるわけですね。
これは演奏にメジャーでもマイナーでもない、あいまいな味を加えることに貢献します。演奏する立場からいうと、とても知的に刺激的なことです。しかしその結果生まれる音楽は抽象的で難解になりやすいというジレンマを生むことにもなります。そうした場合、音楽はポピュリズムを失い、市場が狭くなります。この辺のバランスはとても難しいところですね。
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