BLUESNIK

スケールその1


オクターブ

 前回説明したメジャーやマイナーのスケールはどのようにして生まれたんでしょう。これは人間の聴覚から生まれました。
 ではまず鍵盤を用意して、下の音を同時に弾いてみましょう。え、持ってない?弾いた気になって読んでください(笑)。

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C
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C

 きれいに響きますね。きれいに響きすぎて何の色合いもありません。響くどころか、同じ音に聴こえますよね。これがオクターブ。西洋音楽の基準になっています。

完全5度の響き

 低音でこのオクターブを響かせると、慣れていなくても完全5度の音程が聴こえます。Cの場合、Gの音ですね。
 基準の音と、その完全5度上の音はとても素直に響きます。しかし、明確に「違う音」と認識できます。この「素直に響く音の重なり」が「完全5度の音程」です。

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C
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G
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 基準の音(この場合はC)を「ルート」と呼びます。このルートと完全5度は、これらの音にさまざまな別の音を加えて、より豊かな響きにするときの基準になります。

スケールの作り方

 ルートと完全5度以外にもさまざまな音がありますよね。これらはどういう理屈で生まれるのでしょう。それは「ルートから完全5度の音」をどんどん重ねていくことで生まれます。Gの完全5度は?Dです。Dの完全5度は?Aです。Aの完全5度は?Eです...
 ...という具合に並べると、こうなります。

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C
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G
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D
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A
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l
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E
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l
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B
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l
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l
l F#

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 あれ、Fだけ半音上がってますね。そう、Bの完全5度はF#です。気にせずこれをオクターブになるように並べ替えると

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C
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D
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E
l F#

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l

G
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A
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B
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C

となります。この音の並び方を「リディアンスケール(Lydian Scale)」と呼びます。ジョージ・ラッセルが推奨したのが、このリディアン・スケールを用いてアドリブを行う「リディアン・クロマティック・コンセプト」であることは有名らしい、です(笑)。

メジャースケールとマイナースケール

 この音の並びを、F#→Fにしたものが「メジャースケール」です。


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C
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D
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E
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F
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G
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A
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B
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C

 では、なんでメジャースケールは4番目の音がF#ではなくFなんでしょう。結論からいうと不安定なんです。聴覚の問題ですね。実際にこのスケールを弾いてみるとわかりますが、F#だととても不安定な感じです。
 どうしてF#だと不安定な感じなんでしょう。すべてが「安定している」完全5度で成立しているはずなのに。
 それはルートであるCとF#の関係(ルートと減5度の関係)にあります。C→G→D→A.... と次に来る音は確かに完全5度なのですが、肝心のCとF#の音程が不安定になっているんですね。この音程を別名「トライトーン」と呼びます。
 トライトーンは「安定している完全5度」から「半音ずれた」ハーモニーなんですね。人間の耳は完全5度だと安定して感じますが、トライトーンは安定せず、「完全5度の音の間隔に戻してっ!」と感じるんです。
 この「トライトーンは不安定に感じる」「完全5度は安定して感じる」は、音楽理論の根幹になるものなんですよ。

 メジャースケールの作り方は、もう一つ考えられます。CDEF#GABCを鍵盤で弾いてみると、聴覚上「G」の音が「ド」に感じられると思います。試しにGABCDEF#Gと弾いてみてください。

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G
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A
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B
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C
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D
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E
l F#

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G

 「ドレミファソラシド」に聴こえますよね。つまり、「メジャースケールとはリディアンスケールの5番目を基準にしたスケールである」とも言えるわけです。


 そしてもう一つ。CDEF#GABCを、Eから始めてください。EF#GABCDEになりますね。

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E
l F#

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G
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A
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B
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C
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D
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E
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 これはナチュラルマイナースケールですよね。そう、「マイナースケールとはリディアンスケールの3番目を基準にしたスケールである」とも言えるわけです。

 ここで重要なのは、「同じ音でも始まる音で雰囲気が変わる」ということです。基準になる音を何にするか(この場合GやE)で、メジャーになったりマイナーになったりする、ということです。

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