BLUESNIK
スケールその2
いろいろなスケール 〜教会旋法
スケールが「音のならびのルール」である、ということは前回お話しました。では、前回示した「メジャースケール」「3つのマイナースケール」の他に、「音の並び」にはどんな種類があるのでしょう。ざーっと見ていくことにしましょう。
メジャースケールの始まる音を変えると様々な呼び名のモードが生まれます。
呼び方としては、「Cイオニアンモード」という具合に「最初の音」+「モードの並び方の呼び名」になります。Cイオニアンモードなら「Cから始まるイオニアンという並び方」を意味し、Fフリジアンモードなら「Fから始まるフリジアンという並び方」を意味します。
教会旋法でいわれるモードは7種類存在します。
- イオニアン(Ionian)
- ドリアン(Dorian)
- フリジアン(Phrygian)
- リディアン(Lydian)
- ミクソリデイアン(Mixo-Lydian)
- エオリアン(Aeolian)
- ロクリアン(Locrian)
です。イオニアンは「ドレミファソラシドのド」から始まるモード。いわゆるメジャースケールです。ドリアンは「ドレミファソラシドのレ」から始まるモード。Miles
Davisの「So What」はドリアンです。あの響きです。以下、「ミから始めるモード」「ファから始めるモード」...という具合に対応していきます。
ジャズでよく使用される代表的なモードの並びを紹介しましょう。
Cイオニアンモード:C D E F G A B C
繰り返しになりますが、Cイオニアンスケールは、結果としてCメジャースケールと同じになります。
Dドリアンモード:D E F G A B C D
Aエオリアンモード:A B C D E F G A
エオリアンモードはモードの古典「Milestones」で聴くことができます。結果として、ナチュラルマイナースケールと同じになります。
といった感じだと思います。
正直言って、よく使用されるのはこの辺りだと思います。それ以外のモードももちろん使用されますが、そう数は多くないはず。理由は、「気持ちいいか、悪いか」に尽きます。
スケールとモードの違い
ところで、スケールとモードはどう違うのでしょう。どっちも「音の並び」ですよね。私もわからないので、辞書をひいてみました。
スケール | 一定の音程(音の間隔)で高さの順に配列した音の階段。通常低い音から高い音へ並べる。西洋音楽は七音からなり、長音階、短音階の区別がある。日本音楽は五音からなる。 |
モード | 音楽で、長調や短調で律しきれない音階を形づくる一定の音の組織。古代ギリシア以来ドリア旋法、フリギア旋法、イオニア旋法など多くの旋法が発展して、現在の長調、短調となった。ふつう教会旋法をさす。 |
だそうです。モードは「長調や単調では表現できないものを表現する」ようなので、スケールを含んだ概念のようですね。
モード初期の演奏を聴いてみると、マイナー一発で演奏している例が多いです。「Milestones/Miles Davis」でのタイトル曲のキャノンボール・アダレイの演奏はその典型でしょう。つまり、モードの曲を演奏するために「マイナースケール」という概念を使って演奏した、ということです。
その逆に、マイナーの曲をモードで演奏するには、伴奏者がモードのハーモニーを演奏できなければ、浮いてしまう結果になります。「Somethin'
Else/Miles Davis」での「Freddie Freeloader」がその典型です。マイルスはモードでソロをとりますが、ハーモニー提示者であるウィントン・ケリーがコードで演奏していますので、ちょっとずれた感じになっています。
音階、音の並びはメジャーとマイナー、教会旋法だけではありません。私たちがなじみ深いものを考えると、モードスパニッシュや日本音階、沖縄音階などが存在します。これらは西洋音楽理論では片付けられない独自の楽理を形成しており、興味が尽きません。
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