Sonny Clarkと共演。タイトル曲以外はいい意味で平凡なハードバップアルバムです。
1曲目(Five Will Get You Ten)はClarkのオリジナル。ちょっとファンファーレのようなテーマがいいです。McLeanのアドリブはオーソドックスな枠組みの中から抜け出そうという明確な意思が感じられます。かなり気合が入っているフレーズですね。Tommy TurrentineとSonny Clarkのアドリブは正に王道。Billy Higginsのドラムがそれまでのハードバップとは一味違うんだ、と主張しています。
2曲目(Subdued)は「Embracable You」のコード進行を基にしたMcLeanオリジナルのバラード。McLeanは緊張感のあるアドリブを辛口に吹ききっています。Turrentineはミュートで軽快に。Clarkはしっとりと転がるようなメロディを弾いてくれます。バラードの見本のような演奏です。
3曲目(Sundu)は単純にして快活なFブルース。Brown - Roachの有名なEbブルースとは同名異曲です。McLeanはブルーノートを主体に、リラックス。全員がハッピーに歌っています。Blue Noteレーベルには珍しく、2曲目と3曲目はさほどアレンジが効いているわけでもなく、ジャムセッションを聴いているようです。
4曲目(A Fickle Sonance)はモード。McLeanがモードを本格的に演奏したのはこれが初めてではないでしょうか。そのアドリブはかなり手馴れているようで、周到な準備があったことをうかがわせます。フレーズとしてはコードのアドリブを基盤にした奔放なもの。これは後年まで変わらないMcLean節ですね。Turrentineの演奏も見事ですが、McLean同様にコードに基づくもの。ただし内容は濃く、後半などかなり冒険していますね。そしてSonny Clarkは完全なコードの演奏。段々とBilly HigginsとButch Warrenが乗ってくるのがわかって面白いです。
5曲目(Enitnerrut)は変なタイトルですがTurrentineを逆から綴っているのですね。Turrentineのオリジナル。メロディアスな、聴きやすいテーマです。何かのスタンダードが基になっているようですね。リラックスして聴くことができます。
6曲目(Lost)はユニークなラテン風のテーマを持つButch Warrenのオリジナル曲。構成が変わっていてますね。AABA'なんですが、アドリブになるとAABになり、A'が「Lost」されるようです。アドリブの中身そのものはコード展開に沿ったもの。
過渡期の一枚。ディスコグラフィーとしては「Bluesnik」の次のアルバムなのですが、前作のような爽快感は無く、迷いと苦悩が感じられはじめます。 「Let Freedom Ring」に始まるMcLeanの演奏に変化が見られ始める最初期という意味で貴重なアルバムです。
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