ワンホーンでスタンダード集を吹き込んだ一枚。McLeanのスタンダード集は少ないのでお気に入りの方も多いことでしょう。McLean入門としても最適です。 世の中にはMcLeanの演奏が下手だ、ということを言う方もいらっしゃるようですが、このアルバムの一連の演奏を聴けば「ピッチは外してても音と期待は外さない」McLeanの実力が納得いくことでしょう。
1曲目(What's New)はMcLeanが愛したスタンダード。作曲はburke。Strange Blues、Makin'The Changesでも演奏されています。 肝心の中身はというと、意表をついたミディアムテンポ。全編McLeanの一人舞台。堂々とした吹きっぷりに圧倒されます。
2曲目(Let's Face The Music And Dance)はこの演奏以外では知られないスタンダード。逆に言えばこのMcLeanの演奏で永遠に知られるようになった曲とも言えましょう。作曲はIrvin Berlin。駆け抜けるようなアップテンポ。終始落ち着いたアドリブで安心して聴くことができます。
3曲目(Stablemates)はBenny Golsonの有名なオリジナル。McLeanはハードボイルドに攻めます。ミュージシャンサイドから言うと、この曲はとても難しい構成の曲なのですが、さすがにMcLeanは曲を自らのフィールドにぐい、と引き込んだアドリブです。素晴らしい。
4曲目(I Remember You)は、この曲の代表的な演奏と言っても過言ではないでしょう。Schertzingerの作曲。前向きなムードの曲調の中を生き生きと吹ききるMcLeanの姿が印象的です。アドリブ内容はとても素直で、ジャズのアドリブ入門としても最適なテイク。
5曲目(I Love You)はCole Porter作曲のスタンダード。ラテンのリズムとブレイクが印象的なテイクです。アドリブはあまり冒険しない、素直なもの。テーマ、サビでのキメが素晴らしいですね。
6曲目(I'll Take Romance)はHammersteinのスタンダード。非常にオーソドックスな構成の曲です。McLeanは自分のオリジナルのようなリラックスした演奏です。少しテンポアップしてからのピアノソロも知的で良い感じですね。
7曲目(116th And Lenox)はアルバム唯一のオリジナル。タイトルは、Blue Noteの所在地にちなんでいたはずです。McLeanはPrestigeと別れてBlue Noteと契約でき、その待遇の良さに大変感謝感激したようですが、その辺りの喜び・高揚感がこのタイトルからも伺えます。 演奏内容はモデラートのテンポでストップタイムを多用したテーマのBbブルース。感じるままに演奏するMcLeanのソロがアルバムを締めくくります。アレンジも最後の最後まできっちりしていていいですね。
McLeanはPrestige時代はリハーサル抜きのスタンダード演奏が多かったのですが、リハーサル可能なBlue Note時代はオリジナル志向が高く、スタンダードを集めたアルバムは極めて少ないのが特徴です。そんな中このアルバムは、油の乗った時期に渋いスタンダードを演奏したアルバムとしてとても貴重です。 ディスコグラフィーとしては、Jimmy Garrisonとの共演が珍しいです。どうやらこれ一枚だけのようですね。
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